講座10:がんについて学ぶ 〜がんのサイエンスと診療の実際〜


講座の趣旨・目的等 高齢化に伴い、がんの罹患率、死亡の割合は年々増加の一途をたどっています。私たちのおよそ2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで命を落とすとされ、いまやがんは他人事ではない病気といえます。一方でがん克服に向けてがんの研究や診療は近年目覚ましい進歩を遂げています。この講座では、がんの成り立ちや性質、また頻度の多い消化器がんや乳がんの診断や治療の実際について、最近のtopicを交え解説いたします。
開催日時 6月10日〜6月24日 13:00〜14:00、7月1日〜7月8日 10:00〜11:00 土曜日  計5回
開講場所 宇部市:小串キャンパス
講 師 池田 栄二(大学院医学系研究科・教授)
木村 徳宏(大学院医学系研究科・講師)
武田 茂(大学院医学系研究科・講師)
山本 滋(大学院医学系研究科・講師)
坂本 和彦(医学部附属病院・講師)
講座の概要
開講日 開講時間 講義内容 担当講師
6月10日(土) 13:00〜14:00 「「細胞の社会」から見たがん」 
正常な臓器では、臓器を構成する何種類もの細胞がそれぞれの役割を果たしながら生活しており、あたかも細胞が「社会」をつくっているように見えます。がんは、狂った細胞が無秩序に増殖するものと思われがちですが、最近の研究では、がん細胞が役割分担をしていることがわかってきました。がん細胞には、がん病巣を維持し新しい病巣をつくり出せる細胞(がん幹細胞)と、さかんに増殖するもののそのような能力は持たない細胞(分化したがん細胞)があるというのです。これらの細胞が小集団をつくり、さらに、少しずつ性質の異なる小集団が複数集まって、がんを構成しているのではないかと考えられています。本講座では、このようながん独特の「細胞の社会」のしくみと、治療の難しさとの関連についてお話しします。
木村 徳宏
6月17日(土) 「消化管がんの外科治療について」
消化管とは口から肛門までの一本の管で、消化器外科で扱うのは、食道、胃、小腸、大腸に分けられます。がんによる死亡数の集計(2014年)では、2位:大腸癌、3位:胃癌、8位:食道癌と上位を占めるので、病状に応じた適切な治療が必要です。外科治療は腹腔鏡(胸腔鏡)を用いた低侵襲手術が中心で、開腹手術に比べて切開創が小さいため痛みが少なく術後の回復が早いのが特徴で、本学附属病院では8〜9割の患者さんに行っています。
武田 茂
6月24日(土) 「肝胆膵領域のがん治療について」
肝胆膵領域の悪性腫瘍は解剖学的な特殊性も加わり診断・治療が困難です。安全で根治性の高い手術を行うのは当然ですが、場合によっては放射線科・肝胆膵内科と密な連携を取り、集学的治療(放射線治療・抗がん剤治療)が必要な場合もあります。これら領域のがん治療について概略を説明します。
坂本 和彦
7月1日(土) 10:00〜11:00 「乳がんについてもっと知りましょう!」 日本人女性の12人に1人が乳がんになる時代となりました。毎年9万人の女性が、新たに乳がんと診断されています。しかし、乳がんは早期に発見し、がんの性質に見合った適切な治療を行えば治る可能性の高い病気です。乳がんの診断や治療法に関する最新情報をわかりやすく解説します。 山本 滋
7月8日(土) 「「がん」の診断 ―適切な治療法選択のための情報提供―」 
一口に「がん」といっても、どんな治療も効果なく急速に体中に拡がってしまう質の悪いもの、適切な治療により完全な治癒が望める質の良いものなど、様々な性質のがんがあります。したがって、患者さんの患われたがんの性質を知り、適切な治療計画を立てることが必要となります。医学研究の進歩により、胃癌・肺癌・乳癌といった違いだけではなく、例えば、同じ肺癌でも個々の患者さんの肺癌ごとに適切な治療法が異なることが解ってきました。本講座では、がんの正体はなにか、がんの最終診断はどのようになされるのか、適切な治療法を選択するためにどのような検査が行われるのかについて解説します。
池田 栄二
申し込み人数 29名
受講生の声 ・わかりやすい資料でとても勉強になりました。先生の説明もききやすく理解できました。是非次回も参加させて頂きたいです。外科と病理両方の話がきけてよかったです。(50才代・女性)

・専門で現役の医師からがんの治療方法まで聞けてよかった。事例や症例など実際のスライドを見せていただき、貴重な体験ができた。医師の皆様は説明が丁寧で分かりやすかった。 (40才代・女性)